(2017年2月に視察した報告です)
呉市の医療費適正化の先進的な取組とその効果は全国的に有名であり、できる事から足利市でも導入したいと思い、常々視察に行きたいと思っていた。当局が同行する委員会視察であれば当局と情報の共有ができ、事業展開に結び付けやる位と思うので、予算に制限が無ければ委員会視察で行きたかった内容である。
呉市では、国民健康保険1人当たりの医療費が、元々全国平均よりも10万円以上高く、加入者の高齢化率も高いため、将来が不安視されていた。そこで市民の健康準用の延伸と、国保の健全運営の実現のため、生活習慣病予防を柱とした保険事業を推進することとした。
健康管理増進システムは平成20年度より導入、費用は4000万円。このシステムによりデータベース化したレセプトを点検し、主に以下の取組に活かしている。
- ジェネリック医薬品の使用促進
長期服用する医薬品等について、切り替え可能なジェネリック医薬品の情報を被保険者に提供。10年で69回の通知を述べ33000人に通知し、通知者のジェネリックへの切り替え率は87%にもなる。平成28年度の通知郵送料(格月約2500通)は約90万円で、切り替えによる医療費削減額は約2億5300万円。医師会・薬剤師会へジェネリック使用実績リストを送り、ジェネリック推進への理解を得る努力をしている。
- 重複受信者訪問指導
1つの病名で3カ所以上の医療機関を3カ月以上受診している方を、保健師や看護師が訪問。病が心配で重複受診している方が多いため、相談が効果的。平成27年度対象者22人中7人指導、診療費削減額約120万円。
- 頻回受信者訪問指導
1つの病名で1月に15日以上の受診を3カ月以上継続している方を、保健師や看護師が訪問。平成27年度対象者382人中82人指導、診療費削減額720万円。
- 重複服薬指導
同じ期間に別の医療機関から同じ薬を処方されている方を指導。平成27年度対象者122人中37人指導、調剤費削減額約178万円。
- 併用忌避・回避医薬品情報提供
併用忌避・回避医薬品の処方状況を、関係医療機関に情報提供し、医療機関で確認後指導している。平成27年度対象者16人。
- 生活習慣病放置者フォロー事
糖尿病・高血圧・脂質異常症で元々断続的な受診をしていた方が、3カ月以上受診していない場合に受診を推奨。平成28年度文書通知(1疾患)237件、電話介入(2疾患以上)56件。訪問指導だと訪問までに時間がかかってしまうため、文書と電話としている。
その他、市役所・医療機関・大学・民間団体の連携チームにより、糖尿病性腎症等重症化予防プログラムを実施している。このプログラムは、呉市で糖尿病・高血圧症・高脂血症の方がそれぞれ2万人弱で他の疾患に比べて圧倒的に多いこと、人工透析患者1人当たりの年間医療費が平均400万円近くなることから、糖尿病性腎症・CKD(慢性腎臓病)・脳卒中・心筋梗塞を対象としている。国保のレセプトデータから対象者を抽出し、医療機関で対象者をスクリーニングしてプログラムへの参加を推奨する流れで、現在参加する医療機関は60以上となっている。プログラム参加者には、定期的な主治医からのアドバイスのほか、看護師による6か月間の訪問個別指導と、プログラム終了後6カ月ごとのフォローアップを行っている。この場合の訪問指導は、委託先団体が行う。また、呉市では、これらの総合的な取り組みに合わせて国民健康保険税収納率アップにも力を入れており、収納率89.35%と非常に高い。
これらの取組は、医療費が削減できるだけでなく、個人が支払う医療費負担が減ると同時に健康維持にもつながるため、本市でも積極的に取り入れていくべきと考える。平成30年度より国民健康保険は広域化され栃木県が運営主体となるが、その中で各市が行う取り組みがどう評価されるのかなど今後調べていきたい。